絵本のなかへ帰る 完全版 / 髙村志保著 / 岬書店
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長野県茅野市の老舗本屋「今井書店」の店主、髙村志保さん著書。
目次に並ぶサブタイトルが全て本のタイトルになっていて
それぞれの章で髙村さんご自身の経験を交えながら
本について綴っています。
紹介されている本が知っているものだと親近感も湧いて
髙村さんの経験したエピソードに
自然と自分の思い出が重なったりもして
あたたかい気持ちにさせてくれます。
友人知人に親しみをもってすすめたい1冊です。
夏葉社の直流通のみで行う別レーベル「岬書店」より発行。
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息子が中学生の時、学校の先生から名前を呼ばれない子どもの話を聞いた。
いわゆる問題児というのは先生から名前を呼ばれる。勉強やスポーツができる子も名前を呼ばれる。でも名前を呼ばれない子どもたちがいる。家庭で呼んでもらえればそれでいい。けれど、その子どもは家庭の中でも名前を呼ばれない。そういう子どもが実際に存在する。そういう話だった。
私は言葉に詰まった。しばらく考えてから、「先生、私がその子の名前を呼びましょう」と言った。
先生は少し緊張感の漂う表情で、「高村さん、僕が呼びますよ、その子の名前を」と言った。
先生は私を見ずに、窓の外を見ていた。
「ああ、誰かのことを、いま思っているのだな」と私は思った。
(p.97-98)
「完全版」と銘打っていますのは、以前、1500部限定で、弊社の別レーベル(岬書店)よりこの本を刊行したことがあるからです。
今回はそのオリジナルの『絵本のなかへ帰る』に
・さいごのゆうれい
・鈴狐騒動変化城
・オイモはときどきいなくなる
・子どもに語るアジアの昔話
の4編を追加いたしました。
(夏葉社HPより)
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Youtubeを観る息子は、その小さな手をマウスの上に置き動かす。
すぐに再生と停止ボタンの位置を覚え、広告の消し方を覚える。
スマホでのスクロールも器用にこなしている。
子どもの習得能力の高さに関心し
こんなんだから子どもなんてすぐ大きくなってしまうだろうなと思う。
一方で、絵本はパソコンやスマホの扱いのように
すぐにわかりやすい成長が見えるものではない。
ニコニコしたり、ときに真剣な眼差しで
絵本を見つめている息子だけれど
何を考えているのかな。
今、読んでいるこの物語がこの後、息子の中で
どのような種になるのか、根を張って芽を出すのか。
それは、わかりません。
ただ、信じていることは繰り返し繰り返し読むこと。
これから息子が字が読めるようになって
自分自身で本を読みはじめるようになっても
本は読み聞かせてゆきたい。
自転車のペダルは自分で漕げるようになって
ボールも真っ直ぐに強く蹴れるようになっても
トイレがひとりでできるようになっても
本は読み聞かせてゆきたい。
昨晩もまた布団に入る前に
「しょうぼうじどうしゃじぷた」を息子が携えてやってきた。
そのしょうぼうじどうしゃじぷたの名前を息子の名前に変えて読みはじめる。
息子はすぐに気付いて「じぷた、だよ!」ニヤリと笑う。
「えっ?そうなの?」とぼけながら
じぷたと息子の物語は進む。
(トオク店主)
[ 商品情報 ]
「絵本のなかへ帰る 完全版」
発行:岬書店
サイズ:縦178mm × 横127mm 158頁
装丁:櫻井久 中川あゆみ(櫻井事務所)
装画:きくちちき
印刷・製本:中央精版印刷株式会社
2021年2月16日 発行