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昨年、祖母が亡くなったときにこの本を手にしました。今は祖母の宅墓の隣に置いていて、ときどき手にとってはパラパラとページをめくっています。祖母が亡くなったとき、もっと祈るような気持ちでこの本を手に取るかと思っていました。でも、実際はそういう感情ではなく、介護に疲れ、心身ともに消耗した両親を間近で見ていたし、僕自身介護に関わることでいろいろな感情の混ざりをわかっていました。
祖母を介護施設に入所させることで、いったん家族は時間的にも精神的にも平穏を取り戻し（自宅での祖父の介護は続いていましたが）、そこから少しずつ、また穏やかな気持ちをもって祖母と接することができていたように思えます。厳しい時間でもあり、穏やかな時間でもあり、家族の絆を強く感じた時間でした。もしかしたらそれは祖母が僕ら家族のために残してくれた別れの準備の時間だったのかもしれないと今なら思えます。

夏葉社の島田さんはこの本を大切な人を失ってつくることになりました。この詩の訳者は匿名ですが、その方もまた大切な家族を失っています。みんながみんないいという詩じゃないかもしれません。それでも島田さんたちがこの詩に慰められたように、僕がこの詩にときおり立ち返るように、この詩が悲しんでいる人の心を少しでも支えてくれたらと願っています。
（2022.6 トオク店主）


【 商品情報 】
『さよならのあとで』
詩 ヘンリー・スコット・ホランド
絵 高橋和枝
発行：夏葉社
サイズ：四六判上製, 120頁
2012年1月発行